テーマ「自己分析」の記事では、「軸とは何か」「どのように明確にするのか」「どういった点に注意して優先順位を付けるべきか」ということについて確認をしました。

今回の記事では「具体的にどのように自分の軸に合った企業を見つけるのか」そして「どのように志望動機を作成し、どのように伝えていくのか」という点について見ていきましょう。

「自己分析」に関する記事をまだ見られていない方は、まずはそちらをご覧ください。以下、これまで扱ってきたテーマと該当する記事になります。

 

「自己分析」で扱ったテーマ×記事
■「軸」=「Will・Being・価値観 / Can」
∟『【軸の明確化⓪】自己分析の目的』より
 
■「Will・Being・価値観」を明確にする方法
∟『【軸の明確化①】原動力を明確にする方法』より
 
■能力(Can)を明確にする方法
∟『【軸の明確化②】能力(Can)を明確にする方法』より
 
■軸の優先順位付け(重要度の割り振り)
∟『【軸の明確化③】優先順位を付ける必要性と注意点』より

 

 

1:原動力(Will・Being・価値観)を軸とした企業の見方

 

【軸の明確化①】原動力を明確にする方法』にてご紹介した方法で自己分析をされている方は、「Will・Being・価値観」とそれらに紐づく「トリガー」も明確になっていることと思います。

ここでは 「トリガー」を用いた企業の見方・志望動機の作成方法 について確認をしていきます。

※参考:12のトリガー

 

大きく以下2点について見ていきましょう。
・A:マッキンゼーの7S
・B:7Sと12のトリガーの関係性

 


 

■A:マッキンゼーの7S

企業を客観的に捉える方法として『マッキンゼーの7S』というものがあります。

「企業を見る観点」を把握する上で役立ちますので、まずはこの『マッキンゼーの7S』について確認をしましょう。

ここで押さえておきたいことは、「 企業をSから始まる7つのもので分解して捉えることで、網羅的に企業の側面を見ることが出来る 」ということです。

※『マッキンゼーの7S』について詳しく知りたい方は以下をクリックして下さい。

詳しくはこちら

7Sとは、企業戦略における、幾つかの要素の相互関係をあらわしたもの。優れた企業では、各要素がお互いを補い、強め合いながら戦略の実行に向かっているとされる。世界有数の戦略コンサルティングファームであるマッキンゼー・アンド・カンパニーが提唱した。

7Sは、ソフトの4Sとハードの3Sに分かれる。

ソフトの4S
①Shared value (共通の価値観・理念)
②Style(経営スタイル・社風)
③Staff(人材)
④Skill(スキル・能力)

ハードの3S
⑤Strategy(戦略)
⑥Structure(組織構造)
⑦System(システム・制度)

このうち、ソフトの4つは、価値観が絡む要素であるだけに慣性が働き、強制的にまたは短時間に変更することは難しいとされる部分である。 一方、ハードの3つは、変えようとする意思やプランがあれば、変更することが可能である。

手をつけやすいという理由から、結果として、ハードをしっかり設計し、運用すればうまくいくと考えがちであるが(企業変革を行う場合にもハードのみに手が入れられる場合が多い)、重要なことは、ハードとソフトが融合し、なおかつ整合しているということである。

例えば、戦略を変更しても、従業員を全て入れかえることはできない、または、その戦略に必要なスキルがすぐに身につくわけでないといいったことを全て考慮した上で戦略を実行していくことが重要である。

グロービス「MBA用語集」より

それでは、まずは7つのSについて確認していきましょう。

7つのSとそれぞれの概念は以下になります。

 

戦略(Strategy)
競争優位性を維持するための大きな方向性を指す。

「どういったビジョンを立てるか?(企業戦略)」「どういった事業を展開していくか?(事業戦略)」「事業戦略を実現するために、どういった部署(機能)が必要か?(機能戦略)」といったことが含まれる。

 

組織構造(Structure)
組織形態を指す。

「上司と部下の関係」「指揮命令系統の構造」「コミュニケーションの取り方」「意思決定プロセス」といった、人と人の関係性・コミュニケーションといった側面での構造のこと。

 

システム・制度(System)
生産性を向上させるための、組織全体を管理する制度を指す。

「人事評価・給与制度」「人材育成の仕組み」「情報共有の方法」「顧客情報の管理方法」などが含まれる。

 

人材(Staff)
文字通り人に関することを指す。

平たく言うと「どういった人がいるのか?」ということ。「人柄」はもちろん、「エンゲージメントの高さ」「能力」「原動力」なども含まれる。

 

経営スタイル・社風(Style)
経営層の考え方や志向性、経営(意思決定)の仕方などを指す。

また、組織の雰囲気や暗黙のルールなども含まれる。

 

スキル・能力(Skill)
社員や組織が保有している競争優位性のことを指す。

例えば、「営業が強い」「マーケティングが強い」「プロダクトが強い」など。

 

共通の価値観・理念(Shared value)
組織内で浸透している価値観や考え方などを指す。

※本来「Mission・Vision・Value」と一致するはずだが、浸透していない場合は一致しないことに注意する。

 

そして、青色の3つのSを「ハードのS」、オレンジ色の4つのSを「ソフトのS」とし、大きく2つに分けることが出来ます。

ハードのSは比較的変えやすいものであり、ソフトのSは変更することが難しいものになります。

 

■B:7Sと12のトリガーの関係性

次に、上記の7つのSと12のトリガーとの関係性を見ていきます。

「それぞれのトリガーがどのS(経営資源)と関係しているのか」を確認することで、企業の見るすべき観点を押さえることが出来ます。

7Sと12のトリガーの関係性は以下の通りです。

7S 関連するトリガー
戦略 「安定」「憧れ」「体験」「援助」「成長」「変革」「創造」
組織構造 「地位」「安定」「環境」「仲間」
システム・制度 「お金」「地位」「安定」「健康」「成長」
人材 「環境」「仲間」「成長」
経営スタイル・社風 「安定」「環境」「憧れ」「仲間」「援助」「成長」「変革」「創造」
スキル・能力 「安定」「成長」
共通の価値観・理念 「環境」「憧れ」「体験」「仲間」「援助」「成長」「変革」「創造」

※トリガーごとに見たい場合は、以下から確認したいトリガーをクリックして下さい。

お金地位安定環境健康憧れ体験仲間援助成長変革創造
「システム・制度」
「組織構造」「システム・制度」
「戦略」「組織構造」「システム・制度」「経営スタイル・社風」「スキル・能力」
「組織構造」「人材」「経営スタイル・社風」「共通の価値観・理念」
「システム・制度」
「戦略」「経営スタイル・社風」「共通の価値観・理念」
「戦略」「共通の価値観・理念」
「組織構造」「人材」「経営スタイル・社風」「共通の価値観・理念」
「戦略」「経営スタイル・社風」「共通の価値観・理念」
「戦略」「システム・制度」「人材」「経営スタイル・社風」「スキル・能力」「共通の価値観・理念」
「戦略」「経営スタイル・社風」「共通の価値観・理念」
「戦略」「経営スタイル・社風」「共通の価値観・理念」

上記を参考にした上で、 トリガーの具体化した内容や接続するWill・Being・価値観から、見るべきS(経営資源)の具体化を行いましょう。 

例えば、トリガー「援助」が軸に入っている方の場合は、「どういった戦略、経営スタイル・社風、共通の価値観・理念を自分が求めているのか?」ということを具体化しましょう。

そうすることで、 「見るべき観点」×「条件」が明確になり、企業を網羅的にかつ精緻に見ることが出来るようになり、志望動機をある程度作成することが出来る ようになります。

 

具体例
「援助」を選択しており、その定義が

『目の前にいる人々の存在を肯定し、その人が自分の目標に向かって全力で努力できる環境を提供したい。その上で、実際にその目標が達成できる状態まで育成を行いたい。』

という人がいたとします。

この方の場合、関連するSである「戦略」「経営スタイル・社風」「共通の価値観・理念」それぞれにおいて、以下のような具体化を行うことができます。

■戦略
ビジョンが「自分らしく生きる人を増やす」ことに関連するものかどうか。
 
事業内容はそのビジョンと紐付くものであるかどうか。具体的には、個人に対して、深く長期的にアプローチができるかどうか(「きっかけを与える」程度ではダメ)。
 
上記に記載している目的(ビジョン)と価値を実現するために、営業やカスタマーサクセス(自分が配属される可能性が高いポジション)の中で、顧客への本質的な価値提供を実現するための仕組みが入れらているかどうか。(例えば、サブスク型のビジネスモデルであり、目標の1つとして離脱率が設定されているかどうか、など。)
 
■経営スタイル・社風
ベクトルが自分たちではなく、顧客に向いているかどうか。
 
見極めるポイントとしては、
 
・社員の原動力とその原動力が形成された原体験(自己成長が目的ではなく、他者への提供価値が目的かどうか。原体験があるかどうか。)
 
・経営層がエンドユーザーに直接的に深く触れる経験を持っているかどうか(EdTechサービスをやっているのに、指導経験ないとかはダメ)
 
・これまでで行った最も大きな意思決定とその意思決定の理由(顧客起点で行っているかどうか)
 
・社内でよく飛び交う質問とそれに対する社員の回答(質問は脳内を占領すると考えているため、それが顧客への提供価値に繋がったものかどうかが大切)
 
など。
 
■共通の価値観・理念
Mission・Vision・Valueが「自分らしく生きる人を増やす」に関連しており、それらを浸透するための仕組みはどのようなものか(放っておくと、MVVは浸透せずに薄まると思っているから仕組みが重要)。
 
組織の規模が100名以下であること(人数が増えると、MVVの浸透率は低下するから)。
 
社内でよく飛び交う質問とそれに対する社員の回答が、MVVと照らし合わせた際に違和感がなく、目的が顧客への提供価値になっているかどうか。

 

2:能力(Can)を軸とした企業の見方

 

 Canを軸とした場合は、「職種(具体的な仕事内容)」が大きく関係 してきます。

ただ、なかなか「どういった能力を求められるのか?」を自分で考えることは難しいかと思います。

そのため、面接やOBOG訪問などを通じて、社員の方に 「どういった能力やスタンスが求められるのか?」「どういった人が活躍しているのか?」「それはなぜなのか?(事業内容や職種とどのように関係しているのか?)」 といったことをヒアリングするようにしましょう。

※2月中に、『【軸の明確化②】能力(Can)を明確にする方法』でご紹介した以下のCan一覧のそれぞれのCan毎に「向いている職種」を掲載したものを配信予定です。

領域 Can 定義
対自分 自律 自分で「やる」と決めた事柄をやり切る力。
受容(自己認知) 自分自身に起きた事柄と、それに対する自身の感情のイメージをする力。
決断力 目の前にある複数の選択肢の中から、自身の思考・感情に従って選択する力。
対事柄 目標設定 何かに取り組む際に、到達目標(期限と状態)を設定する力。
計画 遠くにある大きな目標を達成するためにプロセスを細かく分解し、小さな行動目標を段階的に設定しておき、それらの達成のために今から何を行うべきかを考える力。
目的的志向 行動する際に、その目的を考える力。また、行動途中に目的に立ち返ることで、行動の妥当性を確認する力。
具体抽象行き来
(構造・システム把握)
抽象的な概念と具体的な事象が結びついた「具体と抽象」のセットを習得し、問題を解く際に使用できる力。
類推力
(構造・システムの推測と構築)
見たことがない「問題(具体)」が出てきた際に、それを解くために、習得している「具体と抽象」のセットを想起する力。
試行錯誤 解決困難な問題や状況を目の前にした際に、これまでの経験などを頼りにしながら解決しようとする力。また、1度で解決が困難だったとしても、諦めずにやり方を妥当に変更し、解決しよとし続ける力。
追求性 他者からの評価の有無に関わらず、特定の事柄に対して多くの時間を費やし、現状よりプラスとなる量や質を求める力。
正確さ 思考や行動の再現性が高く、いつでも同じ結果を出す力。
精密さ 物事を捉えたり思考する際に、細部まで抜け漏れなく捉える・思考する力。
因果関係把握
(分析力)
状態から原因を考える力と、状態(原因)から結果(その先どうなるのか)を考える力。
言語能力 自分の伝えたい概念(意味)を表す文字を選択する力と、他者から伝えられた文字に含まれる概念を理解する力。
振り返り 過去の成果や行動(プロセス)に対して評価を行ったり、因果関係を考える力。
改善志向 物事をより良い状態にするために、改善策を発散・選択する力。
対人 主張 自分の意見を否定されることを恐れずに、自分の意見を発信する力。
※以下の摩擦との違いは、発信する内容が議論と同一内容であること。
摩擦 自分が否定されたり、他者が自分と異なる意見を持っていると考えられる状況においても、自分の意見を発信する力。
調和 集団において、その集団内の方向性(複数の他者の心情や思考)を把握し、集団において受容される行動をとる力。
受容(他者) 他者の身に生じている事柄・思考・感情をイメージする力。
共感 他者の思考・心情を把握した上で(受容した上で)、自身の経験(疑似経験を含む)に重ねて、他者の心情を追体験する力。
調整 対立が生じ得る状況において、関係している他者の心情を把握した上で、状況をはっきりさせずにうやむやに保ち、対立を防ぐ行動を取る力。
傾聴 他者の思考・心情を把握した上で(受容した上で)、他者に「話を聞いている」と感じさせるような行動をとる力。
支援 自分の介入によって他者がプラスの状態になると思われる状況において、問題を抱える他者の心情を理解し、助けるために適切な行動をとる力。
説得 他者の思考・心情を把握した上で(受容した上で)、他者と異なる自分の意見を納得してもらうために適切な行動をとる力。
統率 集団に属する複数の他者の思考・心情を把握した上で(受容した上で)、向かうべき方向に集団を率いる力。

 

3:志望動機を「固める」方法

 

上記の方法で「ある程度の志望動機」を作成することは出来ます。

ただし、 志望動機を「作って終わり」にしてはいけません。「作って、”固める”」ということを行う ようにしましょう。

具体的な方法としては、

説明会や選考の中で「志望度が上がった」「志望度が下がった」理由を丁寧に言語化し、それを、作成した志望動機にフィードバックする

になります。

 

選考を進んでいくと、志望度が上がる瞬間や、下がる瞬間(他社も含めて)が必ずあるはずです。

その際に、 「なぜ志望度が上がったのか?」「なぜ志望度が下がったのか?」 という問いを立て、しっかり言語化していきましょう。

理由を考える際には、上記で確認した『企業の見るべき観点(7S×トリガー)』が関係しているはずなので、その点を意識するようにしましょう。

 このサイクルを何度も回すことで、より強固な志望動機になっていきます。 

「説明会・選考=志望動機を固めるチャンス」と捉え、選考ごとにブラッシュアップする意識を持ちましょう。

では、最後に「面接で伝える際のポイント」について確認をしておきましょう。

 

4:志望動機を伝える際のポイント

 

伝える際のポイントは以下2点です。

(1) ガクチカで伏線を貼っておく。

(2) 軸となる原動力の原体験を伝える。

それぞれについて具体的に見ていきましょう。

 


 

■(1) ガクチカで伏線を貼っておく。

『原動力(Will・Being・価値観)』を軸としている場合は、ガクチカに関する 「なぜやろうと思ったのか?」「なぜ頑張ることができたのか?」という質問に回答する中で、軸となる原動力を”意識的に”話す ようにしましょう。

【ガクチカの整理①】人事の目線を考慮した整理方法』で確認した以下の図の赤色の部分のことです。

 

『Can』を軸としている場合は、ガクチカに関する「どのように成果を生み出したのか?」「どのような工夫を行ったのか?」といった、BeforeからAfterへの変化を生むために行った行動を回答する際に、軸となるCanを”意識的に”話すようにしましょう。

図で確認すると、以下になります。

 

「あえて、自分の出来ないこと=苦手なCanを軸として、成長をしたいと思っている」という人は、Canを軸にしているというよりは、「苦手なCanを克服したい」という原動力(ざっくり言うと「高い成長意欲」)を持っていると考え、それを「なぜやろうと思ったのか?」「なぜ頑張ることができたのか?」という質問に回答する中で伝えるようにしましょう。

 

 ガクチカの中で軸となる原動力(Will・Being・価値観)やCanを伝えておくことで、ガクチカと志望動機に『一貫性』を持たせることが出来、説得力が増します。 

尚、志望動機を話す際に、「学生時代にお話したことと重複してしまいますが、私は〜〜〜な人になりたいと思っており」といったように、ガクチカと紐付けるような形で話す等の工夫を行うと、一貫性を確実に伝えることが出来ます。

 

■(2) 軸となる原動力の原体験を伝える。

まずは『原体験』という言葉の意味を復習しておきましょう。

【軸の明確化①】原動力を明確にする方法』で確認した通り、これは『 原動力が芽生えたキッカケとなるエピソード 』のことでした。

基本的に、志望動機でWill・Being・価値観といった原動力を話すと、

「なぜそのようなことをしたいのですか?(Willへの深堀り)」

「なぜそのような人になりたいのですか?(Beingへの深堀り)」

「なぜそのようなことが好き、大切だと思っているのですか?(価値観への深堀り)

といったように、 原体験を問われる質問をされることが多い です。

その際に明確に原体験を伝えるよう、必ず準備をしておきましょう。

また、 原体験を問われない可能性もゼロではないので、自分から原体験を話せるように面接官を誘導するような工夫を行っても良いかと思います。 

 

例えば、

3つ軸があります。1つ目は、(Will)です。

中学生の頃のある出来事をキッカケに、(Willを少し具体的に話す)ようなことをしたいと思いました。

御社の理念と事業内容の〜〜〜という点で一致しており、御社でこの思いを実現できると感じました。

といったように志望動機を話すことで、「中学生の頃のある出来事とは何なのか?」と面接官の頭の中に疑問が浮かびますので、必ずそこを問われます。

なぜ誘導をしてまで原体験を話す必要があるのかと言うと、先程と同様、『一貫性』を持たせることに繋がるからです。

 

そして、 原体験、つまり「自分に影響を与えた過去の経験」は原動力とその強さを示す強力なエビデンス となります。

原体験を必ず面接の中で伝え、志望動機の高さをアピールできるようにアウトプットの練習を繰り返すようにしましょう。

「誘導」のテクニックについて具体的に確認したい人は、以下にあり前回の記事『良い面接と悪い面接』を確認してみてください!

 

 

これにて、面接(ガクチカ・志望動機)の整理方法などは以上になります。

次回からは次のテーマである「ES」について見ていきます。

 

尚、テーマ「面接(ガクチカ・志望動機)」の残りのコンテンツである模擬面接動画は2月中に配信予定です。

 

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